自由診療に関わる治療リスクと副作用について
インプラント治療に伴うリスクや副作用について
歯科インプラント治療は、咬合回復のご希望を満足させることのできる治療法の一つですが、長所ばかりでなく、以下のような、手術に伴う併発症のリスクや、いくつかの短所もあります。私たちは、患者様に口腔インプラント治療に関して説明を行い、十分ご理解いただいた上で治療を始めたいと考えています。
(1)手術に伴うもの
インプラント体を埋入する顎骨には隣在する歯や歯根をはじめ、神経や血管、鼻腔や上顎洞などがあり、手術の際にこれらを損傷する可能性があります。その結果、出血、神経麻痺、感染などが起こることがあります。レントゲンやCT撮影を行い、顎骨の形態を詳細に診査するため、このような問題が起こることは少ないですが、本治療を受けた場合、次のような併発症やその他の不利益が生じることがあります。
- 疼痛、腫脹、発熱
手術後2~3日をピークに1週間程度、頬部や顎下部に痛みや腫れが出ることあります。手術後当日は、出血や痛みが増強する可能性があるため、激しい運動、飲酒、夜ふかし、長風呂は避けてください。手術後1~2週間は、創部保護のため手術部位への義歯装着は必要により控えていただきます。それに伴い、食事内容の制限や審美性の低下が考えられます。また、手術後に発熱することがあります。 - 縫合不全および手術部位の感染
創部汚染や歯性感染症(歯周病、根尖性歯周炎)などが原因で、歯肉縫合部の治癒不全や手術部位が感染する可能性があります。感染が生じた場合、洗浄処置、抗菌薬の変更・追加、移植骨の掻爬、埋入したインプラント体の抜去と再手術を行う場合があります。また、感染予防のため、手術に関わる服薬、外来通院時期を、手術内容や経過に合わせて担当医から説明いたします。 - 出血
インプラント手術中、もしくは術後に創部より出血を認めることがあります。圧迫止血法や凝固止血法、結紮止血法などで適切に対応します。なお、手術当日、翌日は微量の出血が続く場合がありますが、通常問題はありません。帰宅後にご心配なことがあればご連絡ください。 - 口角炎
手術の際、視野の確保と手術器具から軟組織を保護するために口唇・口角を伸展させる必要があります。そのため、口唇・口角の炎症や出血が発現する可能性があります。治癒には平均1~2週間かかります。 - 内出血斑
手術した付近の皮膚や粘膜に内出血斑を生じることがあります。治癒には平均2~3週間かかります。 - 知覚異常
手術に伴う侵襲によって下歯槽神経、オトガイ神経の知覚異常(手術をした側半分の下唇から下顎部にかけての感覚異常)や舌神経の知覚異常(手術をした側半分の舌の感覚異常)が生じる可能性があります。また、大きな神経が通らない部位でも術後に感覚異常が生じる場合があります。知覚異常、感覚異常が生じた場合、多くは時間の経過とともに徐々に回復していきます。また、回復を早める薬物治療を行うことがあります。しかし、神経の損傷程度によっては術前の状態まで回復しない可能性もあります。なお、異常感覚が痛みとなり長期に持続する場合には、ペインクリニックなどで専門的治療が必要になる場合があります。 - 上顎洞炎(上顎の場合)
上顎洞は鼻腔とつながっている副鼻腔の1つで、インプラント体の埋入部位によっては鼻出血や副鼻腔炎症状が生じることがあります。その場合、洗浄処置や抗菌薬の内服、まれに、移植材料の除去、埋入したインプラント体の抜去、感染部位の掻爬、再手術や耳鼻咽喉科での治療を行うことがあります。 - インプラント迷入
インプラント体が上顎洞、骨髄内、骨外に迷入する可能性があります。その場合、当日、あるいは、後日、摘出します。 - 隣在歯への影響
インプラント体埋入部位の隣在歯に影響を及ぼし(動揺、疼痛、知覚過敏など)、治療や抜歯が必要になることがあります。 - 異物誤飲・誤嚥
手術中に小器具を誤飲・誤嚥する可能性があります。その場合、レントゲンで位置を確認し、必要に応じて内視鏡下で異物摘出を行うことがあります。 - アレルギー
局所麻酔薬や処方薬、チタン(極めて稀)でアレルギー反応が惹起されることがあります。その場合、ステロイドや抗ヒスタミン薬などの薬物療法を行います。症状が重篤な場合には専門の診療科と連携を取りながら対応します。術前に上記アレルギーの可能性がある方はお申し出ください。必要に応じ、術前にアレルギー検査を実施します。 - インプラント体生着不良
インプラント体が骨に生着する確率は世界的に約97%と言われておりますが,まれにインプラント体が顎骨に生着せず脱落してしまう場合があります。原因は様々ですが、喫煙、コントロール不良の糖尿病、歯ぎしり癖などが挙げられています。とくに、喫煙者は禁煙者と比べ、インプラント体が生着しない確率が2~9倍に増加しますので禁煙をお願いしています。
(2)上部構造や長期経過に関わるもの
インプラント体を支える骨や歯茎などの組織は、細菌、咬合圧などの影響を受けるため、インプラントで噛めるようになった後に、以下に示すようなさまざまな要因により、インプラントの上部構造が割れたり、インプラント周囲に炎症を起こす可能性があります。
- 患者様自身にインプラントが合わない
不良な口腔内の衛生状態、チタンアレルギー、骨質の低下、コントロール不良な糖尿病、喫煙、心身医学的障害など - インプラント体への過剰負担
歯ぎしりや強力な噛合力による上部構造の磨滅や破損 - インプラント周囲の清掃不良
インプラントの上部構造を装着後、インプラントとその周囲組織を長期に安定して機能させるため、歯周病の予防と同様に、常日頃からの丁寧な清掃と、定期的なメインテナンスが重要になります。これらを怠ると、インプラント周囲炎となり、インプラントの除去に至る可能性もあります。
*併発症や副作用が発生した場合、あるいは、それらのお悩みでご来院された場合、望ましい治療方針をご提案し、それに応じた処置を行います。なお、当該処置の治療費は、基本的には自費にて、一部保険にて患者さんのご負担となりますので、あらかじめご了承ください。