顎変形症治療に伴うリスクと副作用について
上下顎骨切り術に共通する偶発症
- 骨切りをした断面の骨髄からの出血や手術部位付近の動静脈からの出血を生じる可能性がありますが、貧血が進んで全身状態悪化のリスクが高い場合には日赤の献血輸血を行います。上下顎の骨切り術では、最大400ml程度の出血のリスクがありますので自己血の貯血が可能な場合には、事前に貯血を行います。しかし、貯血した自己血だけでは足りない場合には日赤の献血輸血を行います。献血輸血ではウイルスなどの感染症のリスクがあります。
- 顔面から頸部にかけて腫れが生じ、ピークは1週間程度ですが、消退には数か月を要します。腫れが強く生じると気道が狭窄し呼吸困難となるリスクが少なからずあります。気道閉塞のリスクがあると判断した場合には緊急の気管切開を行います。気管切開中には発声ができず、首に瘢痕(傷跡)が残ります。
- また、腫れに伴い、稀に顔面神経麻痺を生じる事があり、瞼を閉じられない、口角が下がり、顔貌が左右非対称になるなどの症状を呈します。徐々に回復しますが、回復に半年程度要する可能性があります。
- 口腔内の細菌が創部に感染することがあり、早期にプレート・スクリューの除去が必要になることがあります。
- 骨切り術により移動した骨には筋肉などの軟組織が付着しているため、移動した骨を元の位置に戻そうとする力が働き、後戻りが生じます。顎間ゴムによる顎位の誘導が重要となるため、通常数か月以上の顎間ゴム牽引が必要になります。
- 骨切り線が歯の根と近い位置のため、歯髄壊死、歯根吸収が生じる可能性があり、その場合には、根管治療や抜歯が必要になることがあります。
- 特に顎骨を後方に移動する場合には皮膚のたるみ・しわが生じることがあります。術前に手術シミュレーションでよくご相談させて頂きますが、現在の技術では、術後の軟組織状態(顔貌)を完全に予測することは困難であり、ご了承頂く必要があります。
- 骨切り術により口腔内のスペースが変化するため、発音や構音に変化が生じることがありますが、時間の経過と共に改善することがほとんどです。
- 口腔内から手術操作を行うため、1~2週間程度、口唇が腫れ、炎症が生じます。
- 手術中は麻酔の管を鼻から留置しているため、1~2週間程度、鼻周囲の発赤を生じることがあります。
以下は頻度が少ない(1%未満と推測される)偶発症です。
- 矯正装置の脱落や切削器具の破損により、それらが創内に入り込んでしまうことがあります。術中に判明した異物は可能な場合には除去しますが、後日レントゲンで判明することもあり、後日除去手術が必要になることがあります。
- 全身麻酔下で行う手術ですので、一般的に全身麻酔の偶発症として報告されているものについてもリスクがあります。深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)や肺血栓塞栓症は頻度が少ないですが、弾性ストッキングやフットポンプ装着により予防を行っております。
- 本来の設定する位置とは異なった骨切り線になることがあります(異常骨折)。通常のプレート・スクリュー固定に加え、手術中に追加で固定を行うことがあります。
- 骨切り部の癒合不全を生じることがあります。
- 他に遅発性出血や精神障害や聴力障碍、術後脱毛症なども報告されています。
下顎の骨切り術による偶発症
- 下顎の骨切り術では、下歯槽神経麻痺(下唇や下顎や歯などの触った時の痺れや異常な感覚など)が手術直後には50%以上に人で生じ、1年以上経過しても、完全に治癒しないことがごく一部であります。
- 下顎を後方に移動するといびきをかきやすくなります。睡眠時無呼吸が生じやするなる可能性があります。
- 下顎頭(顎関節)の位置が変化しないように留意していますが、下顎頭の位置が若干変化することがあり、顎関節痛(耳内部の疼痛や違和感を含む)、顎関節雑音、開口障害などの顎関節症状が生じることがあります。術後のかみ合わせが安定しない場合には、早期にプレート・スクリュー抜去が必要になることがあります。また、下顎頭の位置が顕著に前方に出てしまうことを顎関節脱臼と言います、1%未満の頻度で生じると予測されます。顎関節脱臼が生じた場合には、入院中早期に、全身麻酔下にて、プレート・スクリューを除去し、下顎頭を整位し、再度、プレート・スクリュー固定を行う必要があります。顎関節に負担が生じると、長期的にみて下顎頭の骨が吸収して開咬(上下の前歯の間に隙間ができる)傾向になることがあります。
上顎の骨切り術による偶発症
- 上顎の骨切り術では、鼻の形態の変化や鼻出血、鼻閉感を生じます。止血のため、鼻にガーゼを留置することがあります。







